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珠算の将来

東京大学算数研究会が出版した『算数に強い子どもを育てる』の中に「やり方のわかっている問題を競争でやらせる学習効果について」が記載されている。

・・・これは無意味なことではない。計算技能の向上にもなるし既に理解している事柄を定着させる効果がある。ただ、いつも同じやり方で競争させていたのでは限定的な意味しかなく、競争を毎回やっていると理解の早い子どもにとってはすぐに退屈な儀式のようなものになってしまう。

すでに解法のわかっている問題で競い合うと、処理速度が遅い子どもにとってはいつも順位が低いということになり面白くなくなる。これを続けると算数の意欲は失われるかもしれない。

「珠算と算数は、全く別のものである」と考えるならば、珠算は「将来役に立つ」という認識がない現代社会では、珠算の競技は「楽しいゲーム」で終わってしまう可能性がある。算数には分からなかったことを解明していく「わかる喜び」がある。これに対して珠算は「できる喜び」が大きい。つまり珠算は「意味がわからなくても計算ができる」という指導法であり、その延長線上に「珠算の競技」がある。

珠算教育の概念を、従来の「将来役に立つ」から「算数に役立つ」に変えない限り、この先の珠算の発展は厳しいと思われる。『テキスト』は、将来の珠算教育を見越して具体化したもである。『テキスト』を使いこなす能力は、これからの珠算人には絶対に必要となる。したがって、将来の珠算を考えるならば今!学ぶことが大切である。学ぶことなくして大成した人間はいない。これはどんな世界でも通用する「原則」だと思う。

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